ELAC DBR62 試聴レビュー&空気録音&測定

製品レビュー

ELAC DBR62 レビュー

皆様こんにちは、Onsite Audio しけもくです。今回はドイツのELACより、DBR62をレビューします。2020年3月に発売された製品で、2023年現在では新品価格84,000円ほどのスピーカーです。当店でも取り扱いをしておりますが、実際に聴いてみてこの価格帯の新定番となりうる素晴らしいポテンシャルを秘めた製品だと感じました。

この記事ではそんなDBR62の採用技術や実際に自室で50曲ほどを試聴してみてのレビュー、そして測定結果などをご紹介します。また空気録音をお聞きになりたい方は文中でご紹介するYouTubeをご覧ください。

それではまず結論です。

結論

良好な性能でマイナスポイントが少なく、しかしながら退屈しない音楽的な音色です。定位が良く滑らかな質感で、低域の量感があり中域の密度感もあるためスケール感たっぷりでスピーカーオーディオの楽しみを存分に味わえます。価格に対する完成度は非常に高いと言えるでしょう。ジャンルも好みも選ばず高いクオリティを誇るため、誰にでもおすすめできる超優等生的なスピーカーです。

DBR62を聴いていて感じる点として「指摘したくなるようなマイナスポイントが少ない」というのが率直な感想です。これは10万以下スピーカーではなかなか稀有で、例として挙げると、私はこの価格帯ではB&W 607S2AEが最も好きなスピーカーの一つなのですが、低域の量感や中域の密度感、そして高域の強調感などが気になる方はいらっしゃるだろうなと思います。
このDBR62はそういった「ここは気になるかもな」といった指摘をしたくなる大きなマイナスポイントがありません。全体的な完成度はこの価格帯ではトップクラスと言ってよいでしょう。

反面、同メーカーの200シリーズ以上で見られるようなELAC的な個性というのはありません。アンドリュー・ジョーンズの米ELACがプロデュースした製品というのもあるでしょう。ここは詳細でお伝えしたいと思います。

2023年2月現在の価格は84,000円と現実的な価格帯だと思います。価格に対する音質を考えるとコストパフォーマンスは高いと言って良いでしょう。これからスピーカーオーディオを始める方も含めて、幅広くおすすめしたい製品です。

それでは宣伝を挟んで詳細に入ります。

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ELAC DBR62 特徴

それではまずは技術面を含む特徴について簡単にご紹介いたします。

ELAC DBR62 特徴

  1. アンドリュー・ジョーンズによる設計
  2. 新開発ツイーターとウェーブガイド
  3. 独特な形状のフロントバスレフポート

それぞれについて簡単に見ていきます。

アンドリュー・ジョーンズによる設計

アンドリュー・ジョーンズはKEFで11年、Infinityで3年、そしてTADで17年のキャリアを持つ著名なエンジニアです。ELACには2023年現在で8年間勤めており、DBR62が属するDebutシリーズやCARINAシリーズなど様々な製品を開発しています。
理論的なスピーカー設計を得意とし、KEF時代には測定値と設計音の相関関係を調べる研究などもしていたようです。実際にDBR62を聴いてみると従来のELACというよりはTADやKEFなどに近しい音色と滑らかさを感じます(ただし彼が設計したハイルドライバー搭載のBS243.4はELAC的な音色です)。
アンドリュー・ジョーンズ設計という点は音質を語る上で重要なポイントになるでしょう。

新開発ツイーターとウェーブガイド

技術的にはこの点が大きいでしょう。シルクドームツイーターとウェーブガイドにより「高周波のレスポンスを向上させる」としており、また「VELAシリーズでも採用されたウェーブ・ガイドをトィータ周りに装着したことで、歪みのない放射特性に優れたクリアな高音域が再現されます」という内容がアナウンスされています。

ELAC DBR62 ツイーター

これは実際に特性にも現れているように思います。個人的に感じた点としては、横の指向性が良好で視聴位置が多少ずれても良好な音質を楽しむことができました。この点は例えば多人数で利用するリビングユースなどでも大きなメリットになりうるでしょう。

余談ですが、ウーファーはアラミドファイバーというケブラー繊維の仲間の素材を使っていますが、このアラミドファイバーはTADのME-1にも使われています。

独特な形状のフロントバスレフポート

フロントバスレフポートはやや珍しい横長のスリット状の形です。本国サイトでは「低ノイズと高低音出力が可能になり、低音のダイナミクスが改善されます。」とアナウンスされていますが、確かに低域の量感と質感はDBR62の大きな魅力と言え、このバスレフポートが寄与しているのかもしれません。またDBR62自体のサイズは大きめですが、フロントバスレフにより設置性が良いのはポイントと言えそうです。
兄弟ラインのDebut B5.2は音質傾向と設置性の高さからリビングスピーカーに向いていると感じる製品ですが、このDBR62もリビングユースにも向いていそうです。

DBR62 試聴レビュー

それではここからは実際に試聴してのレビューをお届けします。なお、本レビューはメーカーデモ機を弊社環境で鳴らした感想です。ソースは50曲ほどを視聴しています。空気録音をお聴きになりたい方は下記のYouTubeをご覧ください。全て試聴環境でマイクを使い収録した音源です。

 DBR62 良い点

  • 密度感のある中域と量感たっぷりでスケール感ある低域
    • 中域の密度感が高く、音の濃さを味わうことができる
    • 低域は量感豊かで深さもありスケール感を感じる
  • 左右中央でしっかり決まる定位感
    • 左右と奥行きの位置表現を捉えることができる
    • ボーカルは明確に中央に定位、奥すぎず手前すぎない
  • 滑らかで刺激的な音が出ないジャンルを選ばない音
    • 全体的に音が滑らかでザラつきを感じない
    • 高域も刺さる感じはまったくせずどんなジャンルも○

DBR62 気になる点

  • 良くも悪くもELACらしくはない音
    • ELAC的な高域~超高域の伸びはない
    • 中低域以外は個性に欠けると言える
  • 小音量時の高域の質感は柔らかめ、曲によってもう少し強調感が欲しい
    • 遅さや弱さは感じないが、特に小音量時の高域の質感は柔らかめ
    • エレクトリックピアノなど硬質な音の表現はもう一歩

DBR62 良い点

密度感のある中域と量感たっぷりでスケール感ある低域

DBR62で個性を感じる点が中低域の質感と質感です。中域は密度感と厚みを感じる音で、中域の情報量はこの価格帯の中でも多く感じます。
また、低域は量感がしっかりあり深さもあるため、中域の情報量と相まって非常にスケール感を感じます。

土岐麻子さんの『RADIO』では、イントロの深く低いベースラインをしっかりと再生しきりながらも弾力性ある質感を再現します。
Jason Mraz『5/6』では、ドラムのタムやバスドラムのエア感や胴鳴り感がしっかりと再現されています。「ストン」ではなく「ボスン」としっかり鳴る感じと言えばよいでしょうか。またスネアも重心がうわずったような腰高な音でなく落ち着きを感じさせる音です。
Jacob Colierの『Every Little Thing She Does is Magic』では、十分に解像しながらも迫力ある音楽を聴かせてくれます。この曲は細かな音が多いため解像度が低いとぐしゃっとしてしまうのですが、高域から低域まで各音各楽器をしっかりと描き定位を再現しながらも、中低域の密度と迫力をもってスケール感ある音を奏でてくれます。
「ショスタコーヴィチ:交響曲第11番ト短調作品103《1905年》より第4楽章」ではスケール感や迫力を感じられ、特にコントラバスやチェロなど弦楽器の音の密度がしっかりと表現されており説得力のある音です。この価格帯でクラシック曲の再生は高いレベルにあると言えると思います。

左右中央でしっかり決まる定位感

前項でも少し言及しましたが、定位が良く位置表現が見事です。これも価格を考えると素晴らしい性能だと思います。

例えばクラシックの曲では、奏者の位置関係をしっかりと把握することができます。またパンニングのある曲でも高さ表現も含めた「どこで鳴っているか」を表現してくれます。

また、定位感を強調する際にでてしまう「口が大きすぎる」ということもありません。ボーカルは中央に定位し奥過ぎず手前過ぎない自然な位置で歌ってくれます。

DBR62は自然な定位表現をしてくれるスピーカーと言えると思います。

滑らかで刺激的な音が出ないジャンルを選ばない音

特性が良いスピーカーの特徴として挙げられる「音の滑らかさ」や「刺激音の少なさ」は、すなわち多くのジャンルを平均点以上で鳴らすことができるということに繋がります。実際に、ポップスからロック、ジャズ・クラシック、エレクトロやアニソンまで様々なジャンルを聴きましたが、どの曲どのジャンルでも「苦手だな」と感じることはありませんでした。

また汎用的だからといってつまらないということは一切なく、艶感も適度にあるため、例えば女性ボーカルのHiraly Koleなども楽しく聴くことができます。

曲やジャンルを選ばず平均点以上で鳴らしてくれる点(その中でも特にクラシックは先述の通り良好と感じました)は、大きなメリットと言えると思います。

DBR62 気になる点

次に気になる点です。

良くも悪くもELACらしくはない音

DBR62の気になる点はこれに尽きると思います。良くも悪くも「ELAC」というメーカーから想像される音ではないように思います。ELACといえばハイルドライバーによる伸びやかで粒子感のある高域を私は想起しますが、DBR62(や他のDebutシリーズ)はむしろ高域の印象は強くはありません。「ELACのスピーカー」と思って聴くと肩透かしに合うかもしれません。

これは製品ラベルにも現れており、製品背面のラベルには「ELAC AMERICAS INC」、つまりドイツ キールのELACではなく、アンドリュー・ジョーンズ率いるアメリカのELACの製品であると書かれています。

ELAC DBR62 バック

素晴らしい製品ではありますが、ELACのラインナップとして考えた時にDebutシリーズは上位機種と音質的に繋がった製品ではないというのは留意する必要があるかもしれません。

小音量時の高域の質感は柔らかめ、曲によってもう少し強調感が欲しい

上記の点と重なる部分がありますが、特に小~中音量時においては高域の伸びや強調感はもう少し欲しいと感じます。決して遅かったり弱い訳ではないですが、質感がやや柔らかめでもう少し刺激が欲しい場面があります(ソフトドームなのも理由としてあるのかもしれません)。
曲で言えば、ずっと真夜中でいいのに の『Milabo』ではイントロのエレクトリックピアノにもう少し硬質な表現を求めたくなります。また、良好と申し上げたクラシックについても、人によってはバイオリンの「擦り感」が少し足りないと感じる方がいらっしゃるかもしれません。

ただ、周波数測定でもご説明しますが、高域が引っ込んでいる訳ではありません。あくまでも質感としてやや柔らかめに感じるということであり、高域がお好きな方でなければあまり気にならないかもしれません。また繰り返しになりますが、つまらない音であるということは決してありません。十分に音楽を楽しめる音楽的な音だと思います。

DBR62 測定結果

それでは最後に測定結果を見ていきましょう。

なお、ここでご紹介する測定方法は、規格に則った正規・正確な測定方法ではありません。あくまでも弊社同一環境での測定による違いを観測するためのものであるという点は予めご承知おきください。

測定条件は、ツイーターより7cm中心軸上とベースドライバー7cm中心軸上で、Room EQ Wizard(REW)の測定機能により近接測定しています。測定マイクはフラットで近接効果がでないEarthworks M23を使用しています。

なお、これらの測定結果は音の一指標にすぎず、必ずしも音質の良し悪しを語るものでは無いという点は予めご承知おきください。

DBR62 周波数特性について

以下がDBR62の測定結果です。上記で記載した測定方法でクロスオーバーである2.2kHzで合成した線(赤線)と、参考としてツイーター軸上80cmの測定(灰線)を掲載します。基本は赤線をご覧ください。

ELAC DBR62 周波数特性

測定から見える点としては、ブックシェルフとしては非常に低域がしっかり出ているという点、そして全体的にフラット傾向ということです。

上記のグラフで言えば平均100-105dbに対して、50Hzが95dbほど出ています。これは一般的なブックシェルフとしては非常にしっかりと出ている印象です。周波数特性のメーカー公称である44-35000 Hzの説得力を感じる結果です。

またフラット傾向で表されるギザギザが少ない波形は音が滑らかに聴こえると言われます。これは聴覚上で感じる特徴とも一致します。

そして気になる点として高域の柔らかさをあげましたが、測定結果では高域は帯域的には十分に出ています。高域の量感が不足しているという訳ではなさそうです(ただし強調されてもいません)。

なお、近接測定では7kHzあたりにディップ(谷)が見えますが、80cmでの測定では出ず、海外の測定サイトでも見られませんでした。よって近接測定による影響の可能性があります。ご了承ください。

以上が測定結果を踏まえた特徴の解説となります。簡易的なものではありますがご参考になれば幸いです。

終わりに

ここまでご覧頂きましてありがとうございました。

冒頭で申し上げた通り、マイナスポイントが少なく全体的に完成度の高い良い製品だと思います。84,000円という価格も含めて多くの方にオススメできます。

繰り返しとなりますが、弊ショップOnsite Audioは「自宅で試聴 そのまま購入」をコンセプトに、2週間のレンタル提供からそのままご購入頂けるサービスを提供しています。DBR62も用意がございますのでご興味持たれた方は是非ご自宅でご体験ください!

ELAC DBR62の商品ページはこちら

それでは皆様、良きオーディオライフを!

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