CHORD Qutest レビュー&空気録音

製品レビュー

皆様こんにちは、Onsite Audio しけもくです。
今回はCHORD Qutestをレビューします。2018年4月に発売された製品で、2023年7月時点では新品実売275,000円、中古相場では12万円~22万円ほどのようです。

それではまず結論です。

結論

コンパクトながら非常に優れた音質です。この価格帯のDACはあまり選択肢がありませんが、トップクラスと言って差し支えないでしょう。中古価格で10万円台前半で購入できる場合は破格と言っても良いと思います。

個性がありながらも基礎性能の高さも感じます。ふわりと広がる柔らかな音質と粒子感を感じる音質は「きめ細やかな」という表現が似合う音質です。しかしながら曖昧さで誤魔化す感じは全くなく、SNも優れており性能の高さも感じます。

コンパクトでルックスも良く音質も良いですが、HW的な貧弱さはやや否めません。ジャック形状からRCAケーブルの選択肢がやや狭まります。また付属の電源ケーブルは交換が推奨されます。これらの点を許容できるならChordらしさをこの価格で味わえるとても良い背品だと思います。

それでは宣伝を挟んで詳細に入ります。

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Onsite Audioでは、製品名を実際にご自宅でレンタル試聴頂き、気に入って頂けましたらそのままご購入頂くことができるサービスを提供しています。

残念ながらCHORDの取り扱いはございませんが、ご興味ある方は是非アクセスしてみてください。なお本ブログでは弊社取扱製品以外もしっかりレビューをさせていただきます。

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CHORD Qutest 特徴

それではまずは技術面を含む特徴について簡単にご紹介いたします。

49,152 タップを実現する 独自のFPGA

Qutestは同社のポータブルUSB-DAC・ヘッドホンアンプであるHugo2をベースとして、ヘッドホンアンプやバッテリーを省略して、据え置き用途として開発したDACです。すなわち、DAC部はHugo2を踏襲するわけですが、CHORDのDACと言えば伝統的に、ESSやAKGといった汎用のDACチップを用いない、独自のFPGAによるD/A変換を行っています。

このFPGAのWTAフィルタ(CHORD独自のフィルタ)のタップ数(演算性能)はQutestでは49,152タップです。このタップ数が大きいほど処理が細かくなります。
参考までに過去のモデルの変遷では、DAC64で1000タップ、QBD76では4,096タップ、Hugoで26,000タップとモデルの更新とともにタップ数が更改されてきました。上位機種であるDAVEは164,000タップという演算能力を有しています。

基本的にはQutestやHugo2、上位機種であるDAVEの音色は同一線上にありますが、この独自のFPGAおよびWTAフィルタがCHORDのDAC製品の多くの特徴を担っているように思います。同社のDACの最大の個性であり他社にはない魅力の源になっています。

入力は3系統で、USB(PCM768kHz/32bit/DSD22.5MHz)、BNC × 2(シングル接続時 192kHz/24bit, デュアル接続時 768kHz24bit)、TOS × 1(96kHz/24bit)です。BNCの同軸はやや珍しいので変換が必要かもしれません。USB接続にはノイズフィルター機能である「ガルバニックアイソレーター」を搭載します。コモンモードノイズを抑える役目を果たします。

出力はRCAのみです。RCA端子は感覚が狭く奥行きもありません。NEUTRIKなどのRCAプラグは問題なく適合しますが、FURUTECHやAECOのようなオーディオグレードのはめ込みが深いRCAプラグでは奥まで刺さらず正常に音が出ないケースがあるため、組み合わせるRCAプラグには注意が必要です。この点はQutestの最大のネックだと思います。

電源はMicro-USB 5Vです。純正の電源はやや心もとなく、公式でもオーディオデザイン社のリニア電源を同梱する「Qutest Plus.」というパッケージを発売しています。
後述しますが、電源がボトルネックになる部分は確かにあり、真っ先にカスタマイズを検討すべき箇所だと思います。

CHORD Qutest 試聴レビュー

それではここからは実際に試聴してのレビューをお届けします。上流はゲーミングPC、ソフトウェアはRoon、インプットはUSB、USBケーブルはAudioquest Cinnamon、アンプはNuPrime AMG STAモノラル構成、スピーカーはKEF R3 Metaです。
下記の空気録音を聴いていただけるとより雰囲気がわかりやすいかと思います。比較対象としてはMola Mola Makuaとの聴き比べを行いながらレビューをしました(動画でも録り比べています)。10倍以上の価格差ですが、Makuaは基本性能お化けかつフラット音質であり、Makuaとどう差があるかという観点が製品の個性を掴む点でもわかりやすいため、リファレンスとして採用しています。

CHORD Qutest の音質傾向

一聴してふわりと柔らかく滑らかな音色が広がります。ただ柔らかいだけで刺激のない音優しいだけの音ということは一切なく、音の立ち上がりは速さ、密度もしっかりとあり粒子感がある音の細かさを感じます。色彩感の描写も一定以上のレベルで正確高い音楽性感じる音色です

高域の情報量は悪くなく、自然な高域で表現力が高く音の粒立ちも良く滑らかです。柔らかさのある音がふわりと広がりますが、遅さなどはなく立ち上がりは速さすら感じます。この一見矛盾する音色が両立しているのはFPGAのなせる技でしょうか。Qutestの高域は「柔らか・滑らか・きめ細やか」といった表現を思い浮かべますが、これらはCHORDの目指す「アナログ的」な音色の片鱗を感じることができているように思います。
ハイレベルで気になる点としては、まず最高域でほんの僅かに引っ掛かりや毛羽立ちを感じるケースがあります。ただしこれはほとんどのケースで気にならないと思います。また、Makuaと比べるとNancy Mulliganの後ろのパーカッションでQutestの方が僅かに音数が少ないことがわかります。これは僅かに高域と超高域の情報量が落ちており、最高域の細部表現に僅かな粗さが残るからだと思います。
価格を考えると魅力的で優れた高域であることは間違いなく、上記は価格差を度外視した非常に辛口の指摘です。ハイレベルで気になる点としてあえて挙げさせていただきます。

中域、特に声の表現は非常に自然かつ豊かで滑らかです。繋がりは滑らかで口のサイズは適切です(やや近めです)。艶やかさと正確さは両立しており、過度に脚色をする訳では無いのに長く聴いていたくなるような魅力があります。Makuaと比べても魅力的な中域表現だと感じます。

低域は十分です。帯域的な低さではしっかりと低いところまで出ています。量感も十分ありますが、やや制動が効いていないように感じるケースもあります。
気になる点として、上記空気録音のNancy Mulliganでは最初のフレーズに低いバスドラムの余韻がありますが、Qutestではバスドラムの余韻がやや制御しきれず少し伸びてしまっているように感じます。またRADIOのベースラインも僅かに膨らみすぎる印象があります。これは前述した電源に起因する点で、電源を強化するとかなり改善されます。5V駆動だけあり全体的な駆動力は強くはありませんが、特に純正電源はこの低域部分への影響を感じます。公式で電源改善されたパッケージ品が出るのも納得できます。
とは言え、Makuaと比べた場合でのやや辛口評価であることは否めません。先述の通り悪い低域表現ではなく、価格帯では十分以上の低域である言えると思います。

空間表現は広くもなく狭くもない自然な表現です。定位は正確で奥行きもそれなりに出ます。過度に出すようなタイプではなくMakuaと同様に脚色しない原音に忠実な空間表現をしているように思います。

音の立ち上がり、トランジェントは柔らかいのに速いです。この独特の質感がQutestの個性を色づけているように思います(何度も記載していますが重要な点なので改めて記載します)。

SNは良いです。ノイズフロアは-175dbという驚異的な数値の記載を見ましたが、Makuaと比較しても十分に比較できる静けさなのであながち間違いでないと思います。

解像度は十分です。Nancy Mulliganの背景のパーカス音やギターコードの音離れなど、音の分離感はまだ向上の余地はあると感じる箇所はありますが、解像度お化けであるMakuaと比較しているからだと思います。性能として十分な解像度は保有しています。

他の製品と聴き比べてみての感想

動画にも挙げているMakuaとの聴き比べですが、聴いていただいたわかるように価格差が10倍以上あるにも関わらず、全然聴き比べることができます(もちろん差は感じます、YouTubeの空気録音では1/6くらいになってしまっています)。

Makuaは見通しがよく細部が表現されていて解像度が高い音です。すっきり、ハイスピード、高解像、フルレンジなど基本性能の高さを感じますし、高域の細部の輪郭までぴしっと表現され低域は沈み込みが正確に表現されています。ただし徹頭徹尾脚色のない音で、特に声はややそっけなさを感じます。
性能の高さを存分に感じますし私は十分音楽的と感じますが、人によっては色気のなさやそっけなさを感じるかもしれません。

Qutestは何度も申し上げたように、基本性能が高く、かつ「柔らかさのに立ち上がりの速い」という音色に個性があります。音がふわっとスピード感をもって広がる様は一聴した瞬間に「おおっ」となります。また音楽的なバランスも非常に上手くこしらえられており、聴いていて楽しいDACです。また聴いていて「どうしても気になる」というウィークポイントが少ないのも良いです。

終わりに

ここまでご覧頂きましてありがとうございました。

20万円台〜40万円台のDACというのは製品数が多くなく、また次のステップは100万円〜になるような難しい価格帯です。その中でもQutestは非常に優れた音質、そして優れたルックスを持つ珠玉の製品だと思います。この記事を書いている時点で既にリリースされて5年が経ちますが、未だに強い人気があるのが納得できる製品です。個人的にもとてもオススメできるDACだと思いました。

最後になりますが、弊ショップOnsite Audioは「自宅で試聴 そのまま購入」をコンセプトに、2週間のレンタル提供からそのままご購入頂けるサービスを提供しています。残念ながらCHORD製品の取り扱いはございませんが、様々なスピーカーやアンプを取り揃えています。もしよろしければご来店ください。

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それでは皆様、良きオーディオライフを!

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