皆様こんにちは、Onsite Audio しけもくです。
今回はDALI RUBIKORE 2をレビューします。2024年10月に発売されたDALIのミドルクラススピーカーで、2024年10月時点の実売価格は451,440円です。
音は一聴して「新世代のDALI」を感じさせる音色です。S/Nや解像度、音場表現など基本性能が大きくアップしながら、DALIならではの艶感や情感豊かな音色は健在で、艶感と高い性能が両立する音色は唯一無二の魅力を感じます。旧機種であるRUBICONは2014年発売であり10年の時を経ていますが、その長い時間に行われた研究開発を存分に感じられる(そして従来のDALIの良さも引き継いだ)大きなアップデートがなされています。DALIをご愛用の方のみならず、性能と音楽性のバランスを重視される方には是非ご検討いただきたい逸品です。
それでは以下、詳細レビューです。
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DALIの8つの哲学(8 Sound Philosophy)
RUBIKOREの紹介に入る前に、DALIの哲学についてご紹介したいと思います。これらをご紹介することでRUBIKORE含むKOREシリーズが搭載する技術の意図、そして狙うサウンドへの理解がより深まるかと思います。なお下記でご紹介する内容は本国WEBサイトより引用・要約をさせていただいています。興味深い内容ですのでご興味を持っていただいた方は是非元サイトもご覧ください。
- アンプ最適化(Amplifier Optimised):アンプへの負荷を安定させることであらゆるアンプが最高のサウンドを奏でられる条件を作り上げる
- 明瞭性(Clarity):情報の損失を最小限に抑え、時間領域と周波数領域の両方でスムーズでシームレスな再生を実現する
- ホログラフィックサウンドイメージング(Holographic Sound Imaging):機械的歪み、ダイナミック圧縮、信号損失を最小限に抑え、スピーカーを「消失」させてアーティストが意図したとおりのサウンドを再現する
- 個別製作(Individually Crafted):電気インピーダンス、音響周波数応答、歪みから「擦れ音とバズ音」、SPL/感度、絶対極性まで、すべての側面を1台1台評価する
- 低損失(Low Loss):低音ポートの配置、クロスオーバー、コーン、サスペンション素材の設計からボイスコイル、マグネット モーター システムまで、損失を最小限に抑え、驚くほど透明で忠実な音響パフォーマンスを再現する
- 低共振キャビネット(Low-Resonance Cabinet):スピーカーキャビネットの不要な振動による不要な色付けが起こらないよう、ドライバーごとに最適な音量を提供し、ドライバーにとって理想的な音響/機械プラットフォームを提供する
- 時間の一貫性(Time Coherence):スピーカー内のドライバー間の完璧な連携を確保することが、リアルな過渡応答と3次元の音像を実現するための鍵である。正確なタイミングとドライバー間の完璧に最適化された受け渡しを確保し、オーディオ信号を正確なタイミングでリスナーの耳に届ける
- 広範囲に分散(Wide Dispersion):部屋のどこにいても最高の体験が得られるようにスピーカーを設計する
これらのDALIの哲学は、確かにオーディオファンがスピーカーに求める要素がふんだんに詰まっているように感じられます。これらのDALIの哲学を踏まえてDALIの音に触れてみると、また少し違った見方や感じ方が得られるように感じます。
搭載技術について
前置きが長くなりましたが、RUBIKORE 2に焦点を当てていきたいと思います。
RUBIKORE 2は、DALIの代名詞であるSMCウッドファイバーコーンに加えて、「Low Loss ドーム・ツイーター」、「クラリティ・コーン テクノロジー」、「コンティニュアス・フレアポート・テクノロジー」といった先進的な技術を備えています。
まずツィーターです。Low Lossの哲学に基づきエネルギーの損失を減らすための素材選定や構造に拘ることで、透明感のある忠実なパフォーマンスを提供します。
RUBIKORE 2ではシルク素材の29mm口径のLow Loss ソフトドームツイーターを搭載します。シルクならではの温かみのあるサウンドを再生しつつ、一般品よりも半分以下の重量という薄く軽量な構造にすることで、優れたトランジェントとDALIならではの滑らかな高音域を実現します。
次にウーファーです。DALIの代名詞とも言えるSMC ウッドファイバー・コーンは165mm口径。低歪みなサウンドを実現しつつ小音量でもディティールを失わない再現能力を持ちますが、更にクラリティー・コーンテクノロジーを搭載します。ウッドファイバーの表面に凹凸を設けて制振剤を塗布することで、分割共振を抑えてクリア(クラリティー)なサウンドをもたらします。
バスレフポートにはコンティニュアス・フレアポート・テクノロジーという技術を用いています。中央が狭く両端が広い構造になっており、空気が狭い部分で圧縮されてから解放されるため、渦の発生を抑え気流ノイズを低減する効果があります。
外観とサイズ
外観は前機種であるRUBICON 2と似た外観です。ツィーター周りのアルミダイキャストプレートの形が変わったり、背面のスピーカーターミナルはシングルからバイワイヤに対応するなど刷新された点もありますが、大きく変更がないことは逆に安心できる方もいるのではないでしょうか。
サイズはH350 x W195 x D335 mm。カラーバリエーションはハイグロス・ブラック、ハイグロス・マルーン、ナチュラル・ウォルナット、ハイグロス・ホワイトの4種で、ホワイトは受注生産です。
全体的な音質の印象
一聴して「新世代のDALIの音だ」ということがわかります。大きなアップデートとしては、S/Nや解像度、音場表現などの基本的な性能が大きく向上したことです。これまでのDALIのイメージは「女性ボーカルに向いた艷やかな音色」という印象が強い方が多いかと思いますが、その反面、「解像度や性能にはやや甘さがあり、性能というよりは雰囲気を好んで聴くスピーカー」という印象が(特にエントリー〜ミドルクラスには)あったのではないでしょうか(筆者はそういった印象でした)。
RUBIKOREはこのようなDALIのイメージを払拭します。DALI特有の艷やかさや情感表現はそのままに、高解像で明瞭感のある音色を両立させるのです。
例えばベストセラーであるMenuet MRは「艶感があり柔らかな甘さがある」といった印象を筆者は持ちますが、RUBIKORE 2は「艶感と情感は豊かなのに高解像で細部の聴き込みもできる」という、一見相反するような音色を実現していると感じます。「DALIといえば女性ボーカル」から「女性ボーカルに秀でた音色を維持しつつ、様々なジャンルでDALIサウンドを高性能に堪能することができる」という次元にまでジャンプアップしたと感じます。
反面、旧来の甘さを「味」と感じる方には、少しシャッキリしすぎたと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
詳細聴き込み
それでは楽曲の聴き込みによる詳細なレビューに移ります。周辺機材は、プレーヤーにEDISCREATION HAYDN JP MODELでRoonを利用、ネットワークプリにMola Mola Makuaを用いてRoon Readyで再生します。パワーアンプにMark Levinson №5302を使用しています。
まずは宇多田ヒカルの「Distance」で音場定位と解像度を確認します。一音目から立ち上がり良く広い音場が目の前にパっと広がる感覚が得られます。この「素早く広く立ち上がる」感覚はこれまでのDALIの印象とは異なる、高性能系スピーカーに通じるような反応の良さを感じます。また他に今までのDALIと異なる点としては、高域がしっかりと出てくることが挙げられます(耳に痛いと言うことは一切ありません)。イントロのメインメロディーのシンセサイザーは歯切れ良く明瞭感をもって鳴らします。
また定位も非常に優れています。「Distance」は定位が良いスピーカーでは頭部後方まで音場が展開され、回転するような音色を体験できますが、RUBIKORE 2もしっかりとそのような音場を感じられます。
解像度も良好です。従来のDALIの「甘さ」はしっかりはっきりと解像し細部を見つめさせるという音質ではなく、おおらかに表現するような傾向があったと感じますが、RUBIKORE 2は細かな部分までしっかりと解像します。バックラインで流れる脚色音までしっかりと再生し、一音一音の質感を輪郭を持ってしっかりと表現します。立ち上がりの良さ、音場表現と定位、解像度はこれまでのDALIから大きくステップアップしていると感じます。
次に声の質感をNorah Jonesの「Cold, Cold Heart」で確認します。歌い始めから衝撃が走ります。これは素晴らしい!DALIの艶感質感が次の次元に進んでいます!
従来のDALIにある暖かさやしっとりとした艶感と情感のある音色に、低歪みでクリアな新世代のDALIの性能が合わさることで、艷やかなのにクリアで臨場感ある歌声という珠玉の音色に昇華されています。これは新世代のDALIの明確な魅力だと感じます。単にNorah Jonesの息づかいを再生するだけでなく、それぞれのフレーズの呼吸の意図まで汲み取れるような声の表現の再生力を感じます。またトランジェントが良く高域の再現性も高いため、抑揚表現の幅が広がり、歌声全体の表現力が向上しています。これまで述べた通り、次世代と言ってよいサウンドの進化を遂げたDALIですが、やはり女性ボーカルの魅力は唯一無二のものがあると思います。
それでは弦楽器の質感はどうでしょうか。寺井尚子の『Piazzollamor』から「フーガと神秘」を聴いてみます。やはりこれも素晴らしいです。一音一音の粒立ちと滑らかな音色を堪能することができます。ゆったりと奏でるシーン、力強く弾くシーンの鳴り分けが良く、寺井さんの表現力を堪能することができます。この楽曲ではS/Nの高さも光ります。弱音部での静けさは歪み感を感じず、表現の強弱がしっかりと描き分けられています。
また生楽器の質感には欠かせない中域の厚みもリッチで、バックのコントラバスの音の厚みもしっかりと感じることができます。
次にオーケストラ。久石譲の『WORKS Ⅱ~Orchestra Nights~』から「アシタカせっ記」を聴きます。オーケストラの重厚感と迫力をしっかりと再生してくれるスケール感のある音色です。ブックシェルフですが上つき感は全くなく、しっかりと地に足の付いたワンランク上のサイズかのようなスケール感を覚えます。
面白いのは、これまでの印象として性能の高さをお伝えしてきましたが、オーケストラにおいては各楽器の響きを分解するような音色ではなく、調和を上手くしつらえた音色に聴こえます。前述するしたように定位がよく各楽器の位置関係が明確に把握でき、それらが(それぞれの音色の統制が取れているという意味で)音の群となって身体に迫ってきてくれます。非常に感動的に楽曲に入り込むことができました。
低域の再生能力を確認するためにEDMを再生します。WYR Gemiの「Black Samurai」を流します。この楽曲は20Hz付近という非常に低い帯域が入った楽曲です。RUBIKORE 2は公称50Hz(±3db)ですが、かなりしっかりとした低域が出ます。量感は普通かやや多い方に感じます。低さはさすがに30Hz台のブックシェルフには叶いませんが、通常の楽曲の範囲では十分に満足できる低域と言えるのではないでしょうか。なお、この楽曲も側方〜後方定位が入っていますが、それらをしっかりと感じることができました。やはりRUBIKORE 2の定位は優れていると言えると思います。
男性ボーカルも聴いてみましょう。Jason Mrazの「5/6」を聴いてみます。イントロは目の前で響くようなライドシンバルを感じます。やはり定位が良く、聴いていて臨場感があります。Jason Mrazの声はしっかりと真ん中に定位し、Norah Jonesの時と同じく息遣いの細かなところまで再生してくれます。男性ボーカルが得意なスピーカーにあるようなマッシブさはありませんが、しっかりとストレートに出てきてくれる印象です。DALIは女性ボーカルが得意で男性ボーカルに関する言及はあまりありませんが、決して苦手な訳では無いと思います。
最後に総合的な評価を筆者のリファレンスである土岐麻子の「Radio」で行います。
開始1秒から鳴りの良さと立ち上がりの良さが分かります。イントロのシンセサイザーの音の粒立ちが良く明瞭に聴こえますが、ヒステリックさや押し付けがましさはなく、あくまでもリラックスして聴けるのに明瞭さがあるという、相反すると思われる感覚が両立する独特な(そして上質な)音色です。
また低域の厚みと存在感がしっかりとあり、音の軽さは一切ない重厚なベースラインを感じることができます。低域の再現性・階調感はかなりレベルが高く、低音の質感や肌触り感をしっかりと感じることができます。
音場はこれまで述べてきたように広く感じます。広さに振りきったような音色ではなくあくまでも自然な範囲での広さです。
土岐麻子さんの声はナチュラルですがDALI的な艶感は健在です。やはりDALIの女性ボーカルは素晴らしいです。性能が上がったことで細かな息遣いまで細やかに感じられることができます。目の前で土岐麻子さんが艷やかに歌い上げてくれる感覚はオーディオの醍醐味を感じることができます。
まとめ
艶感や情感の豊かさなど従来のDALIの良さも引き継ぎつつ、性能や明瞭さを得た新世代のDALIと感じます。これまでのDALIが好きな方にとってはもしかしたら賛否両論の意見があるかもしれませんが、DALIの方向性がアップデートされて新たな道に進んでいっているという感覚を私は持ちました。少なくとも筆者にとってはかなり好ましい音色で、100万円クラスのスピーカーとも選択を悩める秀逸な機種だと感じます。DALIがお好きな方こそ、是非一度聴いていただきたいスピーカーです。
Onsite Audioは常設展示をしております。皆様のご来店、またはレンタル試聴、そしてご購入をお待ちしております。
以上です。長文ご覧いただき誠にありがとうございました。
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